5『誘惑』





秀美はばっと顔を上げ、彼を見た。
数秒が、数分に感じた。彼との目線が絡みつく。
彼はにっこりと笑い、秀美の目をまっすぐ見つめた。
秀美は彼から目を逸らすことが出来ずに囚われた。

「さぁ、靴を脱いで?」
彼の言葉で秀美は我に帰る。秀美はほっと肩の力を抜いて「お邪魔します」というと靴を脱いだ。
彼に手を引かれ、ダイニングへ向かった。

「秀美・・」
聖は秀美と兄を怪訝な表情で見つめていた。
二人は顔見知りなのか?秀美は何故、兄貴に拘る?
聖の中で後悔と疑問が渦巻いていた。

「何してるの?聖。お茶入れて、気が利かない奴だな。」
玄関で呆然としている聖に彼は当然のように命令をした。

学校では王様のような聖が兄に顎で使われている。
不思議な感じに秀美は二人のやり取りを目を見張って見つめた。

「今、お茶来るから待っててね?」
「あ、お気遣いな・・・」
秀美は言葉を失った。隣に座った彼の顔がとても近いことに驚いた。

鼓動が聞こえそうなほど鳴っている。

「クス。よく分かったね。もっと時間掛かるかと思ったよ。」
彼は秀美の髪を指で絡めながらじっと見つめている。

「な、何がですか?」
髪を絡める彼の手をじっと見つめる。彼の一挙一動にドギマギしていた。


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