「「コロン・・・。分かったからここに来たんでしょ?」
秀美の鼻に彼は首を近づけた。甘い香りがふわっと漂う。
秀美の心臓は一気に跳ね上がった。こんなに近くに彼がいる。

秀美は小さく頷いた。
「勘のいい子だ。聖に少しだけコロンをつけておいたんだ。まさかこんなに早く会えるなんて思ってなかった。」
秀美から身体を離し、間近で秀美の顔を覗き込んでいる。

「ひでみちゃん・・・。」
彼は秀美の顎を取ると、上に向かせ少しずつ顔が近づいてくる。
彼から目が離せない。こんなに緊張するのは初めてだった。何事にもクールな秀美が、彼の前はで軽く遊ばれている気さえした。


何も考えられなくなって、頭が白くなる。


「あ・・の・・・ひでみじゃなくて秀美です・・・」
秀美は彼の目をじっと見つめたまま、ポツリと呟いた。

「・・・・・ぷっ・・あはははっ」
唇が合わさる寸前、彼は破顔した。

「ごめん・・聖がいつもひでみちゃんって言ってるから、ごめんね。そうだ、俺は叶(かなえ)まだ名前も言ってなかったね。」


―ひでみちゃんって・・・


秀美は眉間に皺を寄せた。
学校だけじゃなくて家で、自分が居ないところで自分の話をされたことに不快を感じた。

「ひでよしってどういう字?秀吉?」
「優秀の秀に美しい・・です。」
自分の名前を説明するのが少しだけ恥ずかしかった。

「名は体を表すっていうけど、本当だね。秀でて美しい・・まさに秀美にぴったりだ。」


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