秀美は、そのことばかり気にして、彼が言った事に気付かなかった。
『可愛いね・・・ひでみちゃん』
胸が高鳴った。


―会えるんだ・・やっと。
そればかりを考えていた。


「おは・・・・・・・秀美? 」
聖は秀美に声を掛け損なった。

ぽーっと頬を赤らめ空ろな目、極めつけははぁっと零れた溜息。
壮絶な色気に周りの生徒が息を呑んだ。
聖もその1人だった。

「秀美ッ!!」
「えっ!ちょっと、離せっ」
聖は慌てて秀美の手を取り、校内へと急いだ。
秀美の非難の声も無視をして一刻も早く2人きりになりたかった。

生徒会室に秀美を押し込み、しっかりと施錠をして秀美に振り返った。

「伊積、何のつもりだ」
刺を含んだいつもの秀美の声。
「秀美、何があった?そんな顔して。誰かとやってきたみたいな顔だな?」
秀美の顔色は変わらなかったが、微かに揺れた瞳が動揺を物語っていた。
普通の人であればきっと気づかなかったが、聡い聖に通用しなかった。

「相手は誰だ?」
秀美を壁に追い込み、逃げることが出来ないように両手を壁に付き自身と壁の間に挟んだ。


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