『今日はもう終わりだね・・また明日・・』
息だけの掠れた声。
秀美の耳を犯した。
初めて聞いた彼の声。思っていたよりも男らしい声だった。綺麗な人かと想像していたのに。
いつも電車から押し出されるように降りる秀美は彼の顔を確認することが出来ずにいた。
どんな人なんだろう。彼を想う時間は一層長くなった。
―痴漢されているのに・・いやじゃない。俺は変態なのか・・?
学校に行くには少しだけ早い。
身体の熱を放出するために、トイレへと駆け込んだ。
秀美が彼に痴漢されるようになったのは、高校2年に進級した頃からだった。
入学式の準備の為、いつもより1本早い電車に乗ったのがきっかけだった。
あれから3ヶ月。
彼に、彼の手に会うために迷うことなくそこに足を運んだ。
―会いたい・・会いたい・・。
「おはよっ!今日も麗しいな。ひでみちゃん!」
「うるさい。ひでみじゃない。ひでよしだ。」
生徒会会長の伊積聖(いつみ ひじり)。
通学路で待ち構えたかのようなタイミングで毎朝、声を掛けてくる。
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