1『始まり』
「っ・・ンっ・・・ァッ」
いつもの時間、いつもの車両、いつもの場所で。
瀬ノ尾秀美(せのお ひでよし)はいつものように痴漢されていた。
―どうしよう・・気持ちいい
制服のズボンの上からやんわりと握りこまれ、もどかしい刺激を受けていた。
すき間など数センチもないような空間で、いつ誰にその痴態を見られてしまうのか、
そう思っただけで興奮がエスカレートしてしまう。
秀美を毎日のように弄んでいる“彼”は、飽きずにただ秀美の股間を掴んでいるだけだった。
―もっと・・して欲しい・・・・・
“彼”はそこを掴んでいるだけで満足かもしれない。
だけど、秀美にしたらその30分は拷問のような時間なのだ。
拷問だと思いながらも時間を変えることなく、
車両を変えることなくこの場所に来てしまうのは“彼”に・・いや“彼”の手に一目惚れしてしまったからだった。
“彼”の白い肌、細くて長い指。それは決して女性のものとは違う手だった。
後ろから抱きすくめられる度に、甘いフルーツのような香りが漂う。
鼻腔をくすぐるその香りは秀美をさらに昂揚させた。
―もっと・・もっとっ
“彼”に触れて欲しい。
こんな場所で叶わない願いを日々募らせていた。
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